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厚生労働省は医療費削減の目的のために、「医療区分1」の入院患者は〝医療の必要のない患者″であるとし、「医療区分1=社会的入院者」という一種のフィクション(あるいはデマゴーグと言ってよいものです)をつくりあげました。
一般的には、治療の必要のない人が退院後の受け入れ先がないなどの理由で病院にとどまることを「社会的入院」といいますが、そうではない人まで社会的入院とする。
なぜそんなまやかしを厚生労働省はする必要があったのでしょうか。
この「医療区分1」の入院患者を多く抱えるのが、介護療養病床です。
医療費削減のために、その介護療養病床を全廃する。
厚生労働省は、突然こうしたことを言いはじめたのです。
三段階の医療区分を提案した教授ご自身は、「医療区分1」の人たちに入院の必要がないなどとは言っていないのです。
むしろはっきりと、「分科会でのエビデンス(根拠)が政策判断のために違うかたちで利用された」と明言しています(中医協診療報酬調査専門組織、慢性入院医療の包括調査分科会、平成十九年三月十九日中間報告書)。
医療区分はおおよそ次のようになっています。
医療区分3……[疾患・状態]スモン、医師および看護師による二十四時間体制での監視・管理を要する状態これをはじめて見た方はピンとこないかもしれませんが、私の病院に入院している患者さんはほとんど「医療区分1」だけれども、介護保険の要介護度は平均すると四・五くらいです。
医療・介護の必要性は、ともに高い。
そして身体の病気に認知症を併せもっていることも多い。
状態が変わりやすく、年間に死亡する方も多くいる。
そういう患者さんたちに、医療が必要ないわけがないのです。
でも「医療区分1」です。
それなのに-。
「医療区分1」といわれる人は入院をして医療を受けるのが不必要な人であり、「社会的入院」の患者である。
「介護療養病床」には多くの「社会的入院」患者がおり、その是正と財源の削減のために介護療養病床を廃止し、医療の必要性の高い人は医療療養病床へ、そうでない人はコストが割安な老人保健施設(介護施設と病院の中間的機能をもち、自宅復帰のための一時的入院施設と位置づけられる)などの居住系の施設に入ってもらうーこういう見解が、突然、厚生労働省から出されました。
平成十七年の十二月です。
そして介護療養病床(全一三万床)を平成二十四年度までに全廃し、医療療養病床(全二五万床)を一五万床に削減するというのです。
医療区分2、3となる人は入院医療が必要で医療施設に残っていいが、そうでない患者さんは、すべて受け皿施設へ移るように……。
こうして始まったのが「療養病床問題」です。
たしかにどの患者が「社会的入院」にあたるのかを判別するのはすごく難しい問題ですが、少なくとも「医療区分1」の患者がすべて「社会的入院」であるというのはまったくのまちがいなのです。
療養病床とか、医療区分とか、社会的入院とか、聞き慣れない言葉がいきなり出てきて戸惑っておられるかもしれません。
しかしこれは、皆さんの生活に直結する問題ですので、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。
介護療養病床とはどんなところか介護療養病床について、少しお話ししましょう。
介護保険が適用される介護療養病床は、介護保険の判定で要介護1以上の判定を受けると利用することができる施設です。
要介護度とは七種類、要支援1、2と、要介護1~5まであり、医療区分と同じで重度者ほど数字が大きくなります。
介護療養病床に入院している患者の要介護度は、全国平均で要介護四二二くらいです。
要介護度と医療区分というのはまったく別の尺度で、要介護度が四二二ないし四・五というと、介護を少し知る人であれば、相当に重度で、多くの介護を必要とする人だということがおわかりいただけるだろうと思います。
寝たきり、あるいはほとんどそれに近かったり、認知症も重かったり、自分の身のまわりのことはほとんどできない状態です。
要介護度は重度なのに、医療区分では軽度の1の方が介護療養病床には多く入院しています。
もちろん、医療区分2や3の患者も入院していますが、介護療養病床の大きな役割は、医療区分1の患者を医療区分2や3にしないように、また要介護度を少しでも軽くするようにすることにあり、医療従事者と介護スタッフがチームを組んでケアをしています。
医療区分1の患者に医療ケアを何もしないままでいると、意図するしないにかかわらず、すぐに医療区分2や3になってしまうのです。
このことがお年寄りの特徴です。
介護療養病床では、医療区分を重くしないような努力をしているのです。
老人保健施設でも同じように医療ケアをしているのだけれども、リハビリテーションスタッフの数が少ない、医者が昼間しかいない、看護師も少ないなどの理由で、十分にはできないのです。
だから介護療養病床がなくなると、そこに入院している人の多くはこれまでの老厚生労働省は療養病床を転換して開設する「介護療養型老人保健施設」(転換型老健)という老健の新しい型をつくりましたが、それまでの老健に毛が生えた程度の施設です。
これでは患者の行き場所がなくなります。
つまり「医療難民」が出てくるわけです。
少し整理しましょう。
次ページの図表1、図表2をご覧ください。
ともに厚生労働省が発表した資料から作成したものです。
この二つの表から理解していただきたいことは、次の点です。
介護療養型医療施設とは介護療養病床の正式な名称ですが、そこに入院している患者さんは、明らかに老人保健施設の患者さんよりも、医療と介護の両面ともに「重い」患者さんであることが示されています。
ADLとは「日常生活動作」とも呼ばれ、食事や排泄、着替えなどの生活に必要な動作のことをいい、ADL区分は日常生活動作の自立度をあらわします。
数字が大きいほど自立していない、つまり重介護であることを示しています。
図表3は、医療療養病床入院患者一人当たりの一日にかかる医療処置時間をあらわしています。
この表を見てわかるとおり、「医療区分1」であっても、重介護である「ADL区分3」の患者さんは、「医療区分2」や「医療区分3」(ふつうはこちらのほうが治療を必要とすると考えられている)ながら介護の必要性は低いADL区分2や1の患者さんよりも医療処置時間が長いこと、つまり医療を必要とする度合いが高いことを示しています。
少し言い換えながらくりかえします。
図表3の屈の患者(医療区分1、ADL区分3)のほうが、医療区分2の㈲、吊の患者、医療区分3の刷の患者よりも、医療処置に長い時間を要する、つまり医療を必要としているということを、この表はあらわしています。
次の図表4は、リハビリテーションスタッフを除いたスタッフの人件費から算出したケア時間を示したもので、図表3と同じ考え方で比較したものです。
やはり「医療区分1」であっても、重介護である「ADL区分3」の患者のほうが、医療区分2でADL区分2と1の患者、医療区分3でADL区分1の患者よりも、ケア時間を長く必要とする、つまりはマンパワーを多く必要とすることがわかります。
「医療の必要のない社会的入院」とされた「医療区分1」であっても重介護の患者は、入院治療が適当とされた患者(医療区分2や3)で介護の必要性が低い患者よりも、医療処置量、ケア量とも必要としていることは明らかです。
つまり厚生労働省は、まったく根拠のないことを理由として介護療養病床をなくそうとしているのであり、このことが先ほど「デマゴーグ」という言葉を使った理由です。
「医療区分」の実際はどんなものか医療区分についてもう少し具体的にお話ししますと、たとえば先ほどの医療区分2の医療処置の欄には嗜癖吸引が入っています。
じつは一日八回以上これをしていれば医療区分は2になりますが、それ未満であれば医療区分は1です。
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